長期収載品の選定療養導入に伴なう処方入力の変更について
2024年10月から長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の処方に選定療養の仕組みが導入されます。それに伴ってカルテメーカーでの処方入力の方法を一部変更しました。今回はそれについて解説します。
長期収載品の処方に選定療養の仕組みが導入とは?
選定療養とは、基本的には自費なんだけど保険診療に該当する部分は保険で賄いましょうという制度です。代表的なものは差額ベッドですね。歯科だと金属床の総義歯、貴金属の前歯部補綴、一部のF局やシーラントなどがその制度を利用しています。
この選定療養の制度を薬の処方に導入したのが今回の改定です。
後発品の発売開始から5年以上経過している先発品(長期収載品)は自費扱いにする制度改定です。
長期収載品を処方する場合、厳密には長期収載品を患者さんが希望する場合は、基本自費扱いになります。ただし、後発医薬品の価格に相当する部分は保険で賄いますというのが基本的な考え方です。なお、残りの自費の部分は「特別の料金」という名前がついてます。
ただ、単純に差額を自費とすると患者負担が大幅に増えてしまい理解を得られないだろうという調査結果から差額の4分の1を自費として、それ以外の部分は保険で賄うということになりました。
厚労省のサイトから引用
制度自体の詳しい情報は厚労省の以下のページにあります。
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養についてこちらのサイトには関連する情報も含めてとてもよくまとまっていますので、参考にされるとよいでしょう
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養についてAi CLINIC
カルテメーカーでの入力方法
基本的には今までの方法とほとんど変わりません。投薬セット等から入力した場合に、対象となる先発医薬品(長期収載品)が含まれている場合は、自動的に選定療養として扱い「特別の料金」も自動的に計算されてカルテに記載されます。
ペオン錠が長期収載品なので選定療養となってます。選定療養の薬剤には「(選)」と表示されます。また「特別の料金」が表示されます。特別の料金には消費税がかかるので端数がでてきます。
選定療養が含まれる場合、区分領収書も特殊な形式となります。
選定療養部分(2x3=6点)は基本的に自費なので、「保険外負担」の「選定療養費」に区分されます。しかし、実態は保険診療なので一部負担金の計算時には合算されます。(372+6=378点、3割で¥1130円)。「特別の料金」は別項目となって計上されて、領収総額に合算されます。
長期収載品を全額保険適用で処方する
長期収載品の処方は原則選定療養の対象となりますが、医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難な場合は全額保険対象とすることができます。
処方を修正するには処方の部分をダブルクリックして処方編集画面にします。
編集画面で、長期収載品は右上に「長期収載品」と表示され、「保険」か「選定療養」を選択するラジオボタンがアクティブに表示されます。
このラジオボタンで「保険」をクリックすれば全額保険適用になるのですが、単純にクリックするとエラーチェックが働いて次のような警告が表示されます。
下の方に、必要な摘要のチェックボックスがありますので、該当する理由を選択します。チェックをつけると「保険」を選べるようになります。
なお、摘要のチェックボックスの上にカーソルを置いて、少し待つと摘要の理由の詳細が表示されますので、選択の参考にしてください。
保険適用にしてOKボタンを押してカルテに入力すると
となります。「(選)」の表示が消え、「特別の料金」も表示されません。代わりに保険適用にした理由の摘要欄記載が入力されます。
閑話休題
選定療養の時と、保険適用にした時、保険の点数が変わっていないことに気づきましたか?
選定療養の特別の料金が33円でしたので、点数で3点減ってないとおかしいですよね。でも実はこれで計算は合ってるんです。これは薬価の丸め計算に由来する結果なんです。
選定療養の計算は差額を求めるのではなく、差額の4分の1の薬価とそれ以外の部分の薬価が公示されていて、それぞれの薬価をもとに金額を求めます。
ぺオン錠の場合、保険相当分は11.15円で差額の4分の1の薬価は0.35円です。全額保険なら11.5円です。
1回2錠ですので、1回の薬価は保険が22.3円、それ以外は0.7円です。全額保険の場合は23円です。
薬価は15円以下の場合は1点に丸め、それより大きいときは10で割って5捨5超入で点数に丸めます。そうなると保険部分は2.23で2点、それ以外は0.7円で15円以下なので1点、全額保険でも2.3で2点です。
結果、保険部分も2点、全額保険でも2点で点数が変わらなくなってしまいます。それ以外の部分は、どんなに少額でも1点(10円)になりますので、保険相当部分は変化はないのに特別の料金だけ1回10円の負担が発生してしまいます。さらに、点数で計算しますので、1点かける処方量(日数、回数)の特別の料金がかかりますので、保険点数が減らないのに特別の料金だけ発生することになるのです。
これを患者さんに説明を求められると結構厄介なことになりそうですよね。このような説明をしても果たして納得してくれるのだろうか...
処方せんにおける長期収載品
長期収載品に係る点数計算や特別の料金の徴収はあくまでも院内処方の時だけです。処方せんに長期収載品を記載しても特別問題はありません。
処方せんに長期収載品を記載した場合は、記載してある長期収載品にするかそれとも後発薬にするかを、薬局で薬剤師さんが確認します。長期収載品(先行薬)を選択すれば院内処方の時と同じように特別の料金が発生します。後発薬を選べば従来通りの保険診療となります。
ところで、2024年6月から処方せんの形式が変更になってます。次のように「変更不可」の欄の横に「患者希望」という欄が追加されました。
「患者希望」の欄にチェックあるいはXを書くと、薬局で聞かれることなく長期収載品で処方されて選定療養として特別の料金が発生します。処方せんを発行する時点で、患者さんが先行薬にしてくれと頼まれた時には、ここのチェックを入れておきます。(とはいっても、実際は運用のガイドラインでここにチェックがしてあっても薬剤師さんが確認することになってます。なんだかなぁ)
カルテメーカーでこのチェックをつけるには、カルテの処方をダブルクリックして処方編集画面にした後に、「患者都合」にチェックをつけます。
「変更不可」にチェックを入れる場合は、医療上必要があると認められる場合である必要があります。「変更不可」にチェックが入っていると長期収載品(先行薬)が処方されますが、選定療養ではなく従来通りに全額保険適用となり特別の料金は発生しません。
長期収載品で「変更不可」にチェックを入れる場合は院内処方の時と同じように摘要欄記載が必要です。また、保険医署名のところに記名、押印が必要になります。カルテメーカーの場合は医師の名前は自動的に記名されますので、押印を忘れないでしてください。
カルテメーカーでこのチェックをつけるには、同様にカルテの処方をダブルクリックして処方編集画面にした後に、「変更不可」にチェックをつけます。ただし、院内処方の時と同じように事前に理由の摘要欄記載を選択しておくことが必要です。なお、処方せんですので在庫がないという理由で変更不可にはできませんのでご注意ください。
この状態でカルテに保存すると次のようになります。ぺオン錠に変更不可のマークが付き、摘要欄記載がカルテに入力されます。
なお、長期収載品でない先行薬にも「変更不可」「患者希望」のチェックをつけることが可能です。どちらにチェックをつけても指定された銘柄の薬剤が処方されます。長期収載品ではないので通常の保険適用となり特別の料金の発生はありません。
処方パックマスタの変更
今回の改定に伴って、処方パックマスタの様式を変更して長期収載品への保険適用のチェックや付随する摘要欄記載もまとめて処方パックに登録できるようにしています。
例えば、在庫が長期収載品しかない場合、毎回、在庫なしで変更できない(保険適用)というチェックと摘要欄記載を入力しなくてはいけないですが、処方パックにそれらを登録することで従来通りに処置セットから該当する院内処方を選択するだけで保険のチェックと摘要欄記載を自動入力できるようになります。
以下、操作方法です。
サーバーで
「ファイル」メニュー → 「総合情報」
リストから「保守」をダブルクリック
「マスター」メニュー → 「処方パック」
で、処方パックマスタを表示します。
「利用中」ボタンを押して、処置セットに含まれる処方パックだけにします。
修正する処方パックをダブルクリックしてパックの編集画面にします。
カルテの処方編集画面と同じ画面が表示されます。
必要な摘要欄記載をチェックしてから、ラジオボタンの「保険」を選択します。
「 OK」ボタンを押して、保存します。
*この画面でない場合は、上のタブで「処方」をクリックしてページを切り替えてください。
OKを押して、一覧画面に戻ったら、カルテメーカー全体を再起動します。
クライアントにはサーバーに接続時にマスタがダウンロードされて有効になります。
ではこれで入力してみましょう。
投薬セットから、修正した処方パックを選択して入力します。
はい、このように最初から保険適用で、在庫なしの摘要欄記載が入力済みになります。
以上
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