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2021年8月20日 (金)

オンライン資格確認システムの導入方法(その2)

目標1: オンライン資格確認端末単体でwebアプリを動作させて資格確認を行えるようにする

では最初のクエストです。

最初といっても実はこのクエストが終われば80%くらいの作業は終わったことになりますので、この目標は中目標くらいの感覚で、いくつかの小目標を設定してクリアしていきましょう

 


 

小目標1: 前準備

まずは回線や機材の準備です。目標1を達成するのに必要な機材を準備します。

 

回線の準備

新規に引く場合

オンライン資格確認の回線はNTTのフレッツ光回線です。フレッツ光回線といっても様々な種類があります。どの種類が使えるかは、前回紹介したこのページ

端末の設定や操作について知りたい方はこちら医療機関向けポータルサイト

の「ネットワーク接続ガイド」の項の「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」のリンク先のpdfを確認してください。なお利用可能な回線は変化しますので最新のリストを確認してください。

リストでOKとなってる回線でも、診療所のある地域、建物の種類等によって引ける回線、引けない回線があります。より具体的な回線の選定はNTT等に問い合わせて種類を検討してください。

通信速度に関しては、オンライン資格確認、オンライン請求だけであれば一番遅いタイプでもまったく問題ありません。それ以外にも使う場合は用途に応じて速度をお選びください。

すでに回線がある場合

すでに診療所にインターネット回線がある場合は、ご利用の回線を確認してください。上記の「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」をみて、利用可能かどうかを確認してください。対象外の回線の場合、回線の変更が必要ですのでNTT等に連絡をとり回線の変更申請等をしてください。

レセプトのオンライン請求をしている場合でも、オンライン資格確認には使えない回線の場合もありますので必ずご確認ください。

古いBフレッツなどの回線は、新しいフレッツ光回線に自動的に切り替わってる可能性があります。実際にどの回線なのかが、書類だけでは不明になってる場合もありますので、今の回線が実際にどの回線ではあるのかは、必ずNTT等に問い合わせて確認しておきましょう。

現状の回線が対象外だったり、セキュリティ的に院内LAN側と完全に分離したいなどの場合、新たにもう1回線、フレッツ光回線を引くのも問題ありません。その場合は、新規に回線の引く場合に準じて作業をすすめます。

フレッツ・v6オプション

オンライン資格確認の運用には、この「フレッツ・v6オプション」サービスが必要になります。このサービスは、NGN(NTTのネットワーク)に接続された端末同士の通信を許可するサービスです。

このサービスに加入していなくても、NGN内部に存在するオンライン資格確認等システムのサーバーに接続は可能であり運用もできるのですが、オンライン資格確認端末のアプリケーションやOSのアップデートはNGNの外側にあるサイトのため、これらに接続するにはこのサービスへの加入が必要になります。

新規に回線を申し込む時は必ず同時に「フレッツ・v6オプション」サービスを申し込んでください。同時申し込みなら無料でこのサービスを利用できます。あとで申し込むこともできますが、NTTに依頼した場合、工事費が別に必要になります。ご自身で設定を変更にすることもできますが少々面倒です。

すでに回線を引いてあった場合は「フレッツ・v6オプション」に加入されているかどうかをNTTに確認してください。加入されていない場合は工事を依頼してください。ご自身で「フレッツ・v6オプション」の有無を確認し工事(設定)を無料で行うこともできます。その場合、以下のページから申し込みページ等に進み、設定をおこなってください。HGWの設定等も必要になるので少々面倒ですが無料ですぐにできます。

フレッツ・v6オプションNTT東日本

フレッツ・v6オプション

オンライン資格確認端末等は光ケーブルでNTTが提供するIPv6ベースのNGN(次世代ネットワーク)に接続された「端末」です。「端末」からこのNGNを使う場合、3つの種類のネットワーク形態(セグメント)を利用できます。

  1. 端末からNGN内のサーバー(サービス)を使う
  2. 端末からNGNを通り、他の端末に接続する
  3. 端末からNGNを通り、プロバイダーに接続し、インターネットへ接続する

「フレッツ・v6オプション」とは、2の利用形態を許可するものです。3の利用形態もプロバイダという端末に接続するので、同様に「フレッツ・v6オプション」が必要になります。

前記したようにオンライン資格確認等システムはNGN内に存在するので1の利用形態となります。

オンライン資格確認用のアプリのアップデート、OSのアップデートなどの配信サーバーは、他の端末になりますので2の利用形態です。

IPv6でインターネットに接続する場合は3の利用形態です。3つの利用形態は併存するのではなく上位互換ですので、3の利用形態の場合2も1も利用できます。回線を引く時、同時にインターネットをIPv6で使おうとしてプロバイダの契約をすると「フレッツ・v6オプション」が必須のためプロバイダ側から自動的に申し込まれて工事が完了します。

どのセグメントかはIPv6アドレスのプレフックス(128bitのIPアドレスの前半の64(56)bitのこと)で区分されているようです。このため1の状態で契約後にフレッツ・v6オプションの工事をおこなうとプレフィクスが変わるためIPv6アドレスが変わります。またその状態でプロバイダとIPv6でのインターネット利用(IPoE)を契約すると、またアドレスが変更になります。

IPアドレスが変わるとオンライン資格確認等システムの回線認証に失敗しますので運用できなくなります。この場合、再度、回線認証を行うことで運用を再開できるようになります。

光電話

光電話の利用は問題なくできます。光電話の有無で必要な機材が変わります

光電話の契約をするとNTTからはHGW(ホームゲートウェイ)というONU(光回線終端装置)とブロードバンドルーター(ルーター、無線LANルーター)が一体化した装置がレンタルされます。オンライン資格確認端末はこのHGWのLAN側に直接繋ぐことになります。設置方法も設定も比較的簡単な方法となります。追加の機材はLANケーブル程度でしょう。

光電話の契約をしない場合、NTTからONUという装置が設置されます。一般的にはこのONUにブロードバンドルーターを接続し、そのブロードバンドルータのLAN側あるいは無線LANにオンライン資格確認端末を接続することになります。このため別途ブロードバンドルータを用意する必要があります。利用できるブロードバンドルーターには非常に多くの種類がありますが、本連載ではBUFFALOのWSR-1166DHPL2という無線LANルーターを使った場合を解説していきます。

インターネット

インターネットの利用は必須ではありません。プロバイダとの契約がなくてもオンライン資格確認端の運用は可能です。セキュリティのことを考えてあえてインターネットには接続しないというのもアリです。

ただインストールの際にインターネットへの接続も必要になりますし、インターネットを利用できるのは何かと便利ではありますので可能なら契約したほうがいいかと思います。プロバイダはどこでも大丈夫です。

IPv6(IPoE接続)でのインターネット接続

オンライン資格確認等システムの試験運用がはじまった当初は、IPv6(IPoE接続)でインターネットを利用することはできませんでした。しかし、現在はその制限はありません。むしろIPoEで接続してたほうが設定が簡単かもしれません。現在大手のプロバイダは最初の契約からIPv6が前提になってるようですので、インターネットも同時に契約する場合そのままIPv6で契約してしまって問題ありません。速度もIPv4よりは確実に早いのでおすすめです。

既存の回線がある場合でもプロバイダとの契約をIPv6(IPoE)にすることは問題ありません。ただ上記のコラムにも書いたように契約の変更にともなってアドレスが変わりますので、回線認証のやり直しを行ってください。

お客さまID

回線の工事が完了すると「開通のご案内」というような書類が届くかと思います。この書類に記載された「お客さまID」が「オンライン資格・オンライン請求利用申請」をする際に必要になりますので確認しておきましょう。「CAF」あるいは「COP」ではじまり数字が続くコードです。

既存の回線の場合も同じです。開通時の書類を探してIDを確認してください。ONUのラベルに記載されている場合もありますので、探してみてください。どうしてもわからない場合は次の窓口まで連絡してください。

NTT東日本/NTT西日本(フレッツ光の契約情報の確認窓口)
ご連絡先 0120-116-116(受付時間:午前9時~午後5時 年末年始を除く)

 

 


 

オンライン資格確認利用開始・変更申請

回線の工事が終わり「開通のご案内」が届いたら、医療機関等ポータルサイトから「オンライン資格確認利用開始・変更申請」をします。すでに回線があって「お客さまID」がわかれば、同様に「オンライン資格確認利用開始・変更申請」をしてください。 医療機関等ポータルサイト

開いてすぐのページのログインボタンを押して、ログインすると申請のページになりますので、「オンライン資格確認利用開始・変更申請」のフォームを選択して入力してください。「お客さまID」が間違ってると回線認証に失敗して接続できませんので良く確認してください。「利用開始年月」は申し込み当日の月にしておきましょう。翌月とかにするとその月の1日にならないとテストもできませんので、遅れてしまいます。

上記の「利用開始年月」とは別に「オンライン資格確認の運用開始日入力」というフォームが追加されました。上記の日付に優先してこの日付が開始日になるような感じなので、こちらも設定しておきましょう。申請日の翌日の日付でもいれておけば問題ないかと思います。

 

 


 

オンライン資格確認端末用パソコンの準備

オンライン資格確認端末用パソコンに必要なスペックは以下の通りです。

 OS: Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 64bit版
 CPU: Intel i3以上
 メモリ: 8GB以上
 ストレージ: 256GB以上
 USB: USB3.2以上
 デイスプレイ: 1920x1080(フルHD)

資格確認端末において満たすべき要件厚労省

パソコンはデスクトップでもノートでも、どちらでもOKです。ただしOSが特殊な「Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 」というものになります。このOSはデジタルサイネージや機械装置、シンクライアントなど、主に組み込み装置、企業向けのOSです。OSだけの一般販売はありません。パソコンメーカーからのプレインストールモデルだけです。組み込み装置等への対応から仕様の変更が基本的に行われないLTSC(Long-Term Servicing Channel)というライセンス形式になります。バグの修正とセキュリティへの対応以外のアップデートはありません。また余分なソフトのインストールや設定の追加は全くありません。ほんとに余分なものはなく起動した当初は、デスクトップにはゴミ箱だけ、タスクバーにもスタートメニューにも何にも、それこそエクスプローラーさえ登録されていないほど徹底してます。

特殊なOSなので量販店や直販で購入できるものは少なく値段も割高です。EPSON、IOデータ、ロジテックなどのメーカーのパソコンが入手可能です。私はモデルをいろいろと選べるEPSONにしましたが、スペックに見合うものであればどれでも大丈夫だと思います。

ちなみに私はEPSONのEndeavor JS190(光ディスク付き)のi3のモデルを購入しました。

通常のwin10 HomeやProは使えないのか

一般的なOSであっても運用は可能だと思います。実際、最初の接続テストはwin10 Homeのパソコンでおこないましたが問題なく使えました。しかしこれは主にwebアプリケーションの場合で、顔認証や連携アプリを組み込んだ場合はどうなるかは検証していません。winではアップデート後にアプリが対応できなくて動作しないということが結構あることです。それ以外にもアプリ同士のコンフリクトなどパソコンを使っているかたなら色々とご経験されていると思います。そういったことを回避するうえで「Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC」は正しい選択です。ただでさえ面倒なオンライン資格確認のセットアップ作業ですので、それ以上のトラブルを回避する上でも絶対にこのOSを使ってください。値段は高いですが補助金で100%賄えますので迷うことなくチョイスしましょう。

CPU

CPUはIntelのi3以上とされています。私はi3にしましたがパナソニックの場合、顔認証の処理自体をオンライン資格確認端末で行ってるため認証までの時間がCPUに左右されるようです。YouTubeで検証された方の動画がありますがi9等のハイエンドでは確かに早く認証されていました。ただi3だから遅いかというと微妙ですね。部屋の明るさとか、装置への立ち位置だとかで結構違いがでるので。少なくともi3でも実用上は十分な速度で認証できるのは確かです。他のメーカーではそういった報告は聞かないですが、規格上どれも同じような感じですのでCPUの違いは認証速度に影響はあるとは思われます。

メモリ・ストレージ

メモリも最低限の8GBで十分です。ストレージも最低限でOKです。またSSDである必要もありません。販売してるモデルのなかの一番安いいもので十分でしょう。

USB

意外とUSBは重要です。というのも顔認証端末はUSB2では動作しないからです。対応しているのはUSB3.2ですので、必ずその規格のUSBが最低でも1つあるモデルを選んでください。私もセットアップで最初はUSB3.2に接続して問題なかったのですが、受付のレイアウトの都合上、USB2に繋ぎ変えたら顔認証端末が認識されずかなり原因に悩みました。まぁ、外見上差がないので余計わからなかったんですけどね。

ディスプレイ

ディスプレイは1920x1080フルHD以上にしてください。一昔前のWXGA(1280x768)ではwebアプリケーションの画面レイアウトが切れてしまって使いづらくなります。運用がはじまるとwebアプリケーションはほとんど使わないのディスプレイが無くてもいいのではという質問を受けますが、やはりあったほうがいいでしょう。アップデートの確認や顔認証アプリの稼働状況の確認など、意外とみる機会がおおいです。ディスプレイそのものを置くスペースがないのなら、受付のレセコンの端末のディスプレイを共有するようにしてもいいかと思います。必要に応じて画面をスイッチできる製品がいろいろ出てます。本当にスペースがなければ、ディスプレイ、マウス、キーボードをまとめて切り替える装置もありますので、そのような機器の導入を検討するといいでしょう。

ネットワーク(NIC)

NIC(ネットワークインターフェースカード、ネットワークアダプタ)は2系統が推奨されています。ノートブックなら大抵、有線と無線の2系統ありますので、そのままで問題ありません。デスクトップではイーサが1系統というのが一般的ですが、注文時にカスタマイズで有線か無線のNICを追加してもいいかもしれません。またUSBに接続する有線、無線の機器もたくさん売られていますので、あとで必要に応じて追加するのでもOKです。

そもそもの話、院内LANをインターネット等から完全に分離して構成するには2系統必要なのですが、院内LANもオンライン資格端末も同じHGWからインターネットに接続している状態では2つ用意する意味がほとんどありませんので、1系統でも問題ないかと思います。このあたりはこの連載の最後あたりで解説していきます。

光ディスク

光ディスクドライブ(光学ドライブ)は必須ではありませんがあったほうが便利です。というのもパナソニックの顔認証はインストーラー、マニュアルともCD-ROMで供給されるからです。他のコンピュータで読んでUSBメモリにでも移せば、光ディスクがなくても問題ないですが、あればCD-ROMをいれるだけですの一手間省けます。また、同一端末にオンライン請求のセットアップをする際にも使いますのであって損はありません。もちろん外付けのタイプでも問題ありません。他のコンピュータで使ってるのを一時的に拝借してもいいでしょう。

 


 

以上、必要な機材の解説でした。これらの機材の用意や手続きが完了しましたら、次の小目標に進みましょう。

 


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