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2021年8月の2件の記事

2021年8月20日 (金)

オンライン資格確認システムの導入方法(その2)

目標1: オンライン資格確認端末単体でwebアプリを動作させて資格確認を行えるようにする

では最初のクエストです。

最初といっても実はこのクエストが終われば80%くらいの作業は終わったことになりますので、この目標は中目標くらいの感覚で、いくつかの小目標を設定してクリアしていきましょう

 


 

小目標1: 前準備

まずは回線や機材の準備です。目標1を達成するのに必要な機材を準備します。

 

回線の準備

新規に引く場合

オンライン資格確認の回線はNTTのフレッツ光回線です。フレッツ光回線といっても様々な種類があります。どの種類が使えるかは、前回紹介したこのページ

端末の設定や操作について知りたい方はこちら医療機関向けポータルサイト

の「ネットワーク接続ガイド」の項の「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」のリンク先のpdfを確認してください。なお利用可能な回線は変化しますので最新のリストを確認してください。

リストでOKとなってる回線でも、診療所のある地域、建物の種類等によって引ける回線、引けない回線があります。より具体的な回線の選定はNTT等に問い合わせて種類を検討してください。

通信速度に関しては、オンライン資格確認、オンライン請求だけであれば一番遅いタイプでもまったく問題ありません。それ以外にも使う場合は用途に応じて速度をお選びください。

すでに回線がある場合

すでに診療所にインターネット回線がある場合は、ご利用の回線を確認してください。上記の「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」をみて、利用可能かどうかを確認してください。対象外の回線の場合、回線の変更が必要ですのでNTT等に連絡をとり回線の変更申請等をしてください。

レセプトのオンライン請求をしている場合でも、オンライン資格確認には使えない回線の場合もありますので必ずご確認ください。

古いBフレッツなどの回線は、新しいフレッツ光回線に自動的に切り替わってる可能性があります。実際にどの回線なのかが、書類だけでは不明になってる場合もありますので、今の回線が実際にどの回線ではあるのかは、必ずNTT等に問い合わせて確認しておきましょう。

現状の回線が対象外だったり、セキュリティ的に院内LAN側と完全に分離したいなどの場合、新たにもう1回線、フレッツ光回線を引くのも問題ありません。その場合は、新規に回線の引く場合に準じて作業をすすめます。

フレッツ・v6オプション

オンライン資格確認の運用には、この「フレッツ・v6オプション」サービスが必要になります。このサービスは、NGN(NTTのネットワーク)に接続された端末同士の通信を許可するサービスです。

このサービスに加入していなくても、NGN内部に存在するオンライン資格確認等システムのサーバーに接続は可能であり運用もできるのですが、オンライン資格確認端末のアプリケーションやOSのアップデートはNGNの外側にあるサイトのため、これらに接続するにはこのサービスへの加入が必要になります。

新規に回線を申し込む時は必ず同時に「フレッツ・v6オプション」サービスを申し込んでください。同時申し込みなら無料でこのサービスを利用できます。あとで申し込むこともできますが、NTTに依頼した場合、工事費が別に必要になります。ご自身で設定を変更にすることもできますが少々面倒です。

すでに回線を引いてあった場合は「フレッツ・v6オプション」に加入されているかどうかをNTTに確認してください。加入されていない場合は工事を依頼してください。ご自身で「フレッツ・v6オプション」の有無を確認し工事(設定)を無料で行うこともできます。その場合、以下のページから申し込みページ等に進み、設定をおこなってください。HGWの設定等も必要になるので少々面倒ですが無料ですぐにできます。

フレッツ・v6オプションNTT東日本

フレッツ・v6オプション

オンライン資格確認端末等は光ケーブルでNTTが提供するIPv6ベースのNGN(次世代ネットワーク)に接続された「端末」です。「端末」からこのNGNを使う場合、3つの種類のネットワーク形態(セグメント)を利用できます。

  1. 端末からNGN内のサーバー(サービス)を使う
  2. 端末からNGNを通り、他の端末に接続する
  3. 端末からNGNを通り、プロバイダーに接続し、インターネットへ接続する

「フレッツ・v6オプション」とは、2の利用形態を許可するものです。3の利用形態もプロバイダという端末に接続するので、同様に「フレッツ・v6オプション」が必要になります。

前記したようにオンライン資格確認等システムはNGN内に存在するので1の利用形態となります。

オンライン資格確認用のアプリのアップデート、OSのアップデートなどの配信サーバーは、他の端末になりますので2の利用形態です。

IPv6でインターネットに接続する場合は3の利用形態です。3つの利用形態は併存するのではなく上位互換ですので、3の利用形態の場合2も1も利用できます。回線を引く時、同時にインターネットをIPv6で使おうとしてプロバイダの契約をすると「フレッツ・v6オプション」が必須のためプロバイダ側から自動的に申し込まれて工事が完了します。

どのセグメントかはIPv6アドレスのプレフックス(128bitのIPアドレスの前半の64(56)bitのこと)で区分されているようです。このため1の状態で契約後にフレッツ・v6オプションの工事をおこなうとプレフィクスが変わるためIPv6アドレスが変わります。またその状態でプロバイダとIPv6でのインターネット利用(IPoE)を契約すると、またアドレスが変更になります。

IPアドレスが変わるとオンライン資格確認等システムの回線認証に失敗しますので運用できなくなります。この場合、再度、回線認証を行うことで運用を再開できるようになります。

光電話

光電話の利用は問題なくできます。光電話の有無で必要な機材が変わります

光電話の契約をするとNTTからはHGW(ホームゲートウェイ)というONU(光回線終端装置)とブロードバンドルーター(ルーター、無線LANルーター)が一体化した装置がレンタルされます。オンライン資格確認端末はこのHGWのLAN側に直接繋ぐことになります。設置方法も設定も比較的簡単な方法となります。追加の機材はLANケーブル程度でしょう。

光電話の契約をしない場合、NTTからONUという装置が設置されます。一般的にはこのONUにブロードバンドルーターを接続し、そのブロードバンドルータのLAN側あるいは無線LANにオンライン資格確認端末を接続することになります。このため別途ブロードバンドルータを用意する必要があります。利用できるブロードバンドルーターには非常に多くの種類がありますが、本連載ではBUFFALOのWSR-1166DHPL2という無線LANルーターを使った場合を解説していきます。

インターネット

インターネットの利用は必須ではありません。プロバイダとの契約がなくてもオンライン資格確認端の運用は可能です。セキュリティのことを考えてあえてインターネットには接続しないというのもアリです。

ただインストールの際にインターネットへの接続も必要になりますし、インターネットを利用できるのは何かと便利ではありますので可能なら契約したほうがいいかと思います。プロバイダはどこでも大丈夫です。

IPv6(IPoE接続)でのインターネット接続

オンライン資格確認等システムの試験運用がはじまった当初は、IPv6(IPoE接続)でインターネットを利用することはできませんでした。しかし、現在はその制限はありません。むしろIPoEで接続してたほうが設定が簡単かもしれません。現在大手のプロバイダは最初の契約からIPv6が前提になってるようですので、インターネットも同時に契約する場合そのままIPv6で契約してしまって問題ありません。速度もIPv4よりは確実に早いのでおすすめです。

既存の回線がある場合でもプロバイダとの契約をIPv6(IPoE)にすることは問題ありません。ただ上記のコラムにも書いたように契約の変更にともなってアドレスが変わりますので、回線認証のやり直しを行ってください。

お客さまID

回線の工事が完了すると「開通のご案内」というような書類が届くかと思います。この書類に記載された「お客さまID」が「オンライン資格・オンライン請求利用申請」をする際に必要になりますので確認しておきましょう。「CAF」あるいは「COP」ではじまり数字が続くコードです。

既存の回線の場合も同じです。開通時の書類を探してIDを確認してください。ONUのラベルに記載されている場合もありますので、探してみてください。どうしてもわからない場合は次の窓口まで連絡してください。

NTT東日本/NTT西日本(フレッツ光の契約情報の確認窓口)
ご連絡先 0120-116-116(受付時間:午前9時~午後5時 年末年始を除く)

 

 


 

オンライン資格確認利用開始・変更申請

回線の工事が終わり「開通のご案内」が届いたら、医療機関等ポータルサイトから「オンライン資格確認利用開始・変更申請」をします。すでに回線があって「お客さまID」がわかれば、同様に「オンライン資格確認利用開始・変更申請」をしてください。 医療機関等ポータルサイト

開いてすぐのページのログインボタンを押して、ログインすると申請のページになりますので、「オンライン資格確認利用開始・変更申請」のフォームを選択して入力してください。「お客さまID」が間違ってると回線認証に失敗して接続できませんので良く確認してください。「利用開始年月」は申し込み当日の月にしておきましょう。翌月とかにするとその月の1日にならないとテストもできませんので、遅れてしまいます。

上記の「利用開始年月」とは別に「オンライン資格確認の運用開始日入力」というフォームが追加されました。上記の日付に優先してこの日付が開始日になるような感じなので、こちらも設定しておきましょう。申請日の翌日の日付でもいれておけば問題ないかと思います。

 

 


 

オンライン資格確認端末用パソコンの準備

オンライン資格確認端末用パソコンに必要なスペックは以下の通りです。

 OS: Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 64bit版
 CPU: Intel i3以上
 メモリ: 8GB以上
 ストレージ: 256GB以上
 USB: USB3.2以上
 デイスプレイ: 1920x1080(フルHD)

資格確認端末において満たすべき要件厚労省

パソコンはデスクトップでもノートでも、どちらでもOKです。ただしOSが特殊な「Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 」というものになります。このOSはデジタルサイネージや機械装置、シンクライアントなど、主に組み込み装置、企業向けのOSです。OSだけの一般販売はありません。パソコンメーカーからのプレインストールモデルだけです。組み込み装置等への対応から仕様の変更が基本的に行われないLTSC(Long-Term Servicing Channel)というライセンス形式になります。バグの修正とセキュリティへの対応以外のアップデートはありません。また余分なソフトのインストールや設定の追加は全くありません。ほんとに余分なものはなく起動した当初は、デスクトップにはゴミ箱だけ、タスクバーにもスタートメニューにも何にも、それこそエクスプローラーさえ登録されていないほど徹底してます。

特殊なOSなので量販店や直販で購入できるものは少なく値段も割高です。EPSON、IOデータ、ロジテックなどのメーカーのパソコンが入手可能です。私はモデルをいろいろと選べるEPSONにしましたが、スペックに見合うものであればどれでも大丈夫だと思います。

ちなみに私はEPSONのEndeavor JS190(光ディスク付き)のi3のモデルを購入しました。

通常のwin10 HomeやProは使えないのか

一般的なOSであっても運用は可能だと思います。実際、最初の接続テストはwin10 Homeのパソコンでおこないましたが問題なく使えました。しかしこれは主にwebアプリケーションの場合で、顔認証や連携アプリを組み込んだ場合はどうなるかは検証していません。winではアップデート後にアプリが対応できなくて動作しないということが結構あることです。それ以外にもアプリ同士のコンフリクトなどパソコンを使っているかたなら色々とご経験されていると思います。そういったことを回避するうえで「Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC」は正しい選択です。ただでさえ面倒なオンライン資格確認のセットアップ作業ですので、それ以上のトラブルを回避する上でも絶対にこのOSを使ってください。値段は高いですが補助金で100%賄えますので迷うことなくチョイスしましょう。

CPU

CPUはIntelのi3以上とされています。私はi3にしましたがパナソニックの場合、顔認証の処理自体をオンライン資格確認端末で行ってるため認証までの時間がCPUに左右されるようです。YouTubeで検証された方の動画がありますがi9等のハイエンドでは確かに早く認証されていました。ただi3だから遅いかというと微妙ですね。部屋の明るさとか、装置への立ち位置だとかで結構違いがでるので。少なくともi3でも実用上は十分な速度で認証できるのは確かです。他のメーカーではそういった報告は聞かないですが、規格上どれも同じような感じですのでCPUの違いは認証速度に影響はあるとは思われます。

メモリ・ストレージ

メモリも最低限の8GBで十分です。ストレージも最低限でOKです。またSSDである必要もありません。販売してるモデルのなかの一番安いいもので十分でしょう。

USB

意外とUSBは重要です。というのも顔認証端末はUSB2では動作しないからです。対応しているのはUSB3.2ですので、必ずその規格のUSBが最低でも1つあるモデルを選んでください。私もセットアップで最初はUSB3.2に接続して問題なかったのですが、受付のレイアウトの都合上、USB2に繋ぎ変えたら顔認証端末が認識されずかなり原因に悩みました。まぁ、外見上差がないので余計わからなかったんですけどね。

ディスプレイ

ディスプレイは1920x1080フルHD以上にしてください。一昔前のWXGA(1280x768)ではwebアプリケーションの画面レイアウトが切れてしまって使いづらくなります。運用がはじまるとwebアプリケーションはほとんど使わないのディスプレイが無くてもいいのではという質問を受けますが、やはりあったほうがいいでしょう。アップデートの確認や顔認証アプリの稼働状況の確認など、意外とみる機会がおおいです。ディスプレイそのものを置くスペースがないのなら、受付のレセコンの端末のディスプレイを共有するようにしてもいいかと思います。必要に応じて画面をスイッチできる製品がいろいろ出てます。本当にスペースがなければ、ディスプレイ、マウス、キーボードをまとめて切り替える装置もありますので、そのような機器の導入を検討するといいでしょう。

ネットワーク(NIC)

NIC(ネットワークインターフェースカード、ネットワークアダプタ)は2系統が推奨されています。ノートブックなら大抵、有線と無線の2系統ありますので、そのままで問題ありません。デスクトップではイーサが1系統というのが一般的ですが、注文時にカスタマイズで有線か無線のNICを追加してもいいかもしれません。またUSBに接続する有線、無線の機器もたくさん売られていますので、あとで必要に応じて追加するのでもOKです。

そもそもの話、院内LANをインターネット等から完全に分離して構成するには2系統必要なのですが、院内LANもオンライン資格端末も同じHGWからインターネットに接続している状態では2つ用意する意味がほとんどありませんので、1系統でも問題ないかと思います。このあたりはこの連載の最後あたりで解説していきます。

光ディスク

光ディスクドライブ(光学ドライブ)は必須ではありませんがあったほうが便利です。というのもパナソニックの顔認証はインストーラー、マニュアルともCD-ROMで供給されるからです。他のコンピュータで読んでUSBメモリにでも移せば、光ディスクがなくても問題ないですが、あればCD-ROMをいれるだけですの一手間省けます。また、同一端末にオンライン請求のセットアップをする際にも使いますのであって損はありません。もちろん外付けのタイプでも問題ありません。他のコンピュータで使ってるのを一時的に拝借してもいいでしょう。

 


 

以上、必要な機材の解説でした。これらの機材の用意や手続きが完了しましたら、次の小目標に進みましょう。

 


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2021年8月12日 (木)

オンライン資格確認システムの導入方法(その1)

オンライン資格確認等システム』は2021年4月が正式運用開始でありましたが、まぁ、当然のようにいろいろあって開始は9月に延期されました。噂では10月にずれ込むかもといわれています。ですが、この記事を書いている8月の時点での感じではかなりシステムは安定し、インストール等するための環境もノウハウも揃ってきたと感じます。そこで、いままで散発的に書いてきたオンライン資格確認等システムについて導入方法をメインにちゃんとした連載をいよいよ始めたいと思います。

 

オンライン資格確認等システムの全体像

オンライン資格確認等システムは一般的な理解としてはマイナンバーカードが保険証になるというものでしょうが、それは、このシステムの一部の機能でしかありません。

システムの本来の機能は、名前が示すようにオンラインで保険資格の有効性を確認することです。マイナンバーカードだけでなく既存の保険証の記号番号のような情報を元に保険情報が有効かどうかを確認できます。最大の目的はレセプト返戻の一番多い理由の資格の過誤をなくすことです。従来の保険証では保険者の変更、保険証の未回収などによりどうしても完全な有効性の確認ができませんでしたが、オンラインで資格確認ができれば、ほぼ解決されます。(完全ではないのですが、これは後述します。)

導入が決定された当初よりマイナンバーカードとの連携は決定されていたようですが、これはマイナンバーカードに個人を特定する電子証明書が含まれており、それを使って紙ベースではできない個人情報の管理が可能となっているからです。保険情報のような情報を扱うには都合の良かったのでしょう。

実際、オンライン資格確認システムを最大限に生かすには、患者さんにマイナンバーカードで受診していただく必要があります。マイナンバーカードで受診された場合は、高額療養費の情報(限度額認定証)、特定健診情報、処方情報など、追加の情報の取得が可能になりますし、常に最新の保険情報を参照可能です。

ですが、このシステム、残念ながら予定通りの開始はできませんでした。いろいろと批判はあるとは思うのですが、このシステムの全体象をみると、まぁ、よくこんだけ巨大で複雑なシステムを構築できたなぁと正直思います。思ったほど参加医療機関も少なく、これも批判の的になってますが、逆に当初の予定通りに参加したのであれば混乱は今より酷かったと思います。有用性の高いシステムですので、徐々に成長していけばいいのではないかと個人的には思っています。

システムの内部に関しては面白いのですが、これを語ってるといつまでも終わらないので(笑)ただ、複雑でかつ最高レベルに機微な個人情報を扱う関係上、医療機関側のシステムもそれなりに複雑になることは、ある意味しかたのないことです。なんちゃらペイのようにスマホにアプリをインストールすれば終わりというわけにはいきません。

医療機関での対応は、基本的には専門業者(レセコンメーカーやオンライン資格確認導入を行う企業等)に依頼することになりますが、個人的に対応することも可能です。このブログではそのような個人的に構築しようとする方に向けて情報を発信します。

個人で対応するための情報は一応公開されています。医療機関向けに開設されたポータルサイト「医療機関向けポータルサイト」の資料のページがそれです。

端末の設定や操作について知りたい方はこちら医療機関向けポータルサイト

一応というのは、最低限必要なマニュアル類は掲載されているのですが、インストールに必要なアプリケーション等は公開されていないからです。これらのアプリは、ベンダー(レセコンメーカー等)から入手するか、「医療機関等ONS」というベンダー向けポータルサイトへの加入が必要になります。「医療機関等ONS」へは医療機関であれば医療機関の資格で加入できます。詳細は支払基金(本部)にお問い合わせください。

さて、このページ、ご覧になるとわかると思いますが、一応分類はされていますが最低限の説明しかないので、これだけではどこから手をつけていいのか、まったくわからないと思います。まぁ、だからこそ、こんなブログが書けるわけですが(笑)ということで、個人で導入する方法を説明していきたいと思います。

この記事の中で、このサイトのページに記載されたマニュアルがどの時に使うものなのかもざっとご紹介してますので、参考にしてみてください。

システムの構成

インストールの前提として、医療機関からみてシステムがどうなってるかを知っておくことは重要です。ザクッと簡単に図にするとこんな感じになります。

Untitled-20

中心となるのは「オンライン資格確認端末」と表記されたパソコン(PC)です。

「オンライン資格確認端末」は通信回線で「オンライン資格確認等システムのサーバー」に接続され、保険資格等の情報をやりとりします。

この時に利用される「通信回線」はインターネットのようなオープンな回線ではありません。とはいっても物理的にはインターネットと同じなので機器の見た目は同じですけどね。図にあるようにこの回線はNTTの「フレッツ光回線」に限定されています。一応、IPsecという別の方式ならフレッツ光以外の回線も利用できるのですが、このIPsecというのは一般の消費者には直接の販売がされていませんのでこの連載では触れません。

物理的にはというのは、オンライン資格確認の回線だからといって特別な機器があるわけではなく、普通にインターネットに接続するのと全く同じHGWやブロードバンドルーターを使い光ファイバー回線に接続するからです。というのもフレッツ光の場合、インターネットであっても資格確認でもあっても、つなげた先はインターネットではなくNTTのNGN(次世代ネットワーク)というNTTが構築したプライベートなネットワークになるからです。
Untitled-22
「オンライン資格確認等システムのサーバー」はこのプライベートなNGNの中にあり、一方、インターネットはNGNに接続されたプロバイダーを経由して、NGNの外側のインターネットに接続されます。このため機器は同じでかつどちらも同時に利用可能です。
オンライン資格確認端末と「オンライン資格確認等システムのサーバー」を繋ぐ「オンライン請求ネットワーク(資格確認ではないことに注意、もともとオンラインレセプト請求のために構築されたネットワーク)」はNGNの中のさらにプライベートなネットワーク空間です。このネットワークへIP-VPNという仮想的な専用線でセキュアな接続を維持しています。

物理的には同じものですが、オンライン資格確認等システムのサーバーに接続するためにはHGW(ホームゲートウェイ)やブロードバンドルーター、オンライン資格確認端末PCの設定が必要になります。接続設定方法は「オンライン資格確認等システム接続ガイド」を参照します。

回線の認証、オンライン資格管理等システムに接続するための認証に、電子証明書が必要になります。電子証明書の申請等は上記の「医療機関向けポータルサイト」のリンクから行いますが、ダウンロードは各医院にて行う必要があります。この方法を解説しているのが「オンライン請求ネットワーク関連システム共通認証局ユーザーマニュアル」です。ダウンロードするパソコンの種類によってマニュアルが分かれていますが、オンライン資格管理端末で操作する場合は「(オン請求ネットワーク関連システム_Windows_ChromiumEdge)」編を読んでください。

実際のオンライン資格確認等システムはオンライン資格確認端末上で動くwebアプリケーションです。webアプリケーションとはGmailやグーグルマップのようにインターネットエクスプローラー、エッジ、サファリなどのインターネットブラウザを使って利用するアプリケーションのことです。なおオンライン資格確認等システムで利用するブラウザはwindowsのChromium版Edgeに限定されています。

グーグルマップなどを利用するには特別な設定は必要ないですが、オンライン資格確認等システムの場合、高度なセキュリティが必要だったり顔認証端末との連携やプライベートなネットワークへの接続が必要だったりするため、関連するソフトのインストールや様々な設定が必要になります。これらのインストールや設定方法を解説しているのが「医療機関等向けセットアップ手順書(資格確認端末編)」です。

マイナンバーカードを利用するには顔認証端末が必要になります。(単純なカードリーダーも使えますが機能が限定されます。)オンライン資格確認端末とはUSB(USB3.2以上が必要)で接続します。これも単純に繋いだだけで動作するものではありません。顔認証端末のメーカーが提供する「顔認証連携アプリケーション」のインストールと関連する設定が必要になります。これらは各メーカーから提供されるインストールマニュアルを参照します。

これらのインストールで一応、オンライン資格確認を利用することができるようになります。オンライン資格確認端末単体で動作ですので、マイナンバーカードで受診されても資格情報が画面に表示されるだけで、レセコン、電子カルテへの資格情報への入力は手入力になります。チェックも目視ということになり確実とはいえません。保険証で受診された場合も毎回、保険者番号、記号番号、生年月日などの参照のための基本情報の入力が必要であったりと業務を効率化することにはつながりません。

オンライン資格確認が本領を発揮するのはレセコン・電子カルテと連携させた場合です。連携を行えば、マイナンバーカードからの保険情報の自動取り込み、保存済みの保険情報の照会・チェック、来院管理などが自動で行えるようになり受付業務を非常に効率化、確実化することができます。また、処方情報・健診情報の取り込みと管理などのように医療行為そのものへの大きな寄与も期待できます。ただし、これらの機能はレセコン・電子カルテの対応次第のところがありますので、詳細はお使いのシステムのメーカーにお問い合わせください。なお、連携が済んでしまえば、オンライン資格確認端末上のwebアプリケーションを利用することはほとんどありません。レセコン・電子カルテからの利用がメインになってしまいます。

レセコン・電子カルテと連携するには「連携アプリケーション」をオンライン資格確認端末にインストールする必要があります。インストールは「連携アプリケーション導入手順書」を参照します。

業務の概要

オンライン資格確認システムで行う業務は以下のようなものがあります。

  1. 機器の設定・管理
  2. アカウントの管理
  3. マイナンバーカードでの資格確認
  4. 保険証での資格確認
  5. 照会番号の登録
  6. 複数の患者の一括資格確認
  7. 薬剤情報の取得
  8. 特定健診情報の取得
  9. マイナンバーカードでの来院受付
  10. マイナンバーカードからの新患登録
  11. 保険証からの新患登録
  12. レセコンの頭書情報(保険証情報)を元にした資格確認(自動チェック)

1、2はオンライン資格確認端末でのみ行えるものです。特にアカウントの管理はインストールの時に重要になりますので、「操作マニュアル(管理者編)_」は御一読ください。

3から8は、オンライン資格確認端末でもレセコンでもできる業務ですが、上記のようにオンライン資格確認端末ではあまり便利なものではありません。操作方法は「操作マニュアル(一般利用者・医療情報閲覧者編)」に詳述されています。

9〜12はレセコン側が対応していれば可能な業務です。

必要な機材と構成

システムを利用する上で必要な機材です。

  1. 回線
  2. オンライン資格確認端末用のコンピュータ
  3. 各種インストーラー、アプリケーションファイル
  4. 顔認証端末
  5. 院内LANの整備機材
  6. レセコン(電子カルテ)の端末
  7. マイナンバーカード

1の回線は、オンライン資格確認等システムへ接続するための光回線です。基本的にはNTTのフレッツ光回線ですが、フレッツ光にもいろいろな種類があり全て対応しているわけではありません。また他社であっても実質的にNTTのフレッツ光回線を使っている場合は利用可能です。すでにレセプトのオンライン請求を行ってる場合は、そのままその回線を利用可能ですが、回線の契約が古い時は未対応になってる場合がありますので確認が必要です。具体的にどの回線が利用できるのかは、上記のポータルサイトのマニュアルページの「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」のリンク先のpdf書類をご確認ください。

新規に引く場合や、回線を変更された場合、契約書が届くと思うので問題ないですが、既存の回線をそのまま利用される場合は、契約書をさがして「お客さまID」を控えておいてください。オンライン資格確認の利用申請の際に、このIDが必要になります。

あと「フレッツ・v6オプション」というサービスの追加が必要です。新規申し込みの場合、無料で同時に追加できますが、古くから使ってる場合はこのサービスがついてない時がありますので、その場合はサービスの追加申し込みが必要です。このあたりの詳細はまた改めて解説していきます。

2のオンライン資格確認端末用のコンピュータはwindowsのパソコンです。ただしOSが通常のwindows10ではなく「Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 64bit版」というものです。ハード的なスペックは
CPU: Intel i3以上
メモリ:8GB以上
ストレージ:256GB以上
USB: USB3.2以上
デイスプレイ:1920x1080(フルHD)
となります。

特殊なOSですが、EPSON、IOデータ、ロジテック等のメーカーから一般に入手可能です。ただ最近の半導体不足の影響で納期は先となる傾向がありますので、余裕をもって注文するようにしたほうがいいでしょう。

一般的なwin10ではダメかという質問を受けますが、やめた方がいいです。かなり特殊な使い方をしますので素直に指定されたOSを選択しましょう。補助金がでますのでここでケチってもまったく意味がありません。それに使ってみましたが、本当に余分なソフトや設定がされていないので普通のOSより使いやすいくらいです。

3の各種インストーラー、アプリケーションファイルは、インストールに必要なファイル類です。以下のようなファイルが必要ですが、これらは公開されていません。レセコンメーカー等を経由するか医療機関等ONSに加入して入手します。
OQSComApp
OQSComAppCopyJava
ChangeEnvironment
OQSFaceApp
CCybertrustManagedPKIClient
OQSDistroApp

4の顔認証端末は、基本無償で配布されますので、好きなメーカーのを選んでいただければ問題ないでしょう。本連載では一応パナソニックの機器を使った場合を解説していきます。

5の院内LANの整備機材は、オンライン資格確認端末を院内ネットワーク(院内LAN)に参加させるため、あるいは既存のレセコンと接続するのに必要な機材です。単純に接続するだけならLANケーブルだけでいいのですが、セキュリティを確保するためにルーター等の機器の機器の追加が必要になります。

6のレセコン(電子カルテ)の端末は、レセコン側でオンライン資格確認端末に接続するために新たに追加する端末が必要だったりする場合に用意するものです。これはレセコン側の都合によりますので、お使いの各レセコンメーカーへお問い合わせください。

7のマイナンバーカードはやはり必須です。ご自身のカードをこの際に作成してください。申請から発行まで数ヶ月かかりますので、早めにお手続きをしてください。

インストールの大まかな流れ

各機器のセットアップ、設定、インストールの順は次のような感じになります。

  1. 回線の選択と申し込み
  2. オンライン資格確認端末用のコンピュータの発注
  3. ポータルサイトでのオンライン請求に関する開始・変更届出の申請
  4. オンライン資格確認端末PCの基本的なセットアップ...「医療機関等向けセットアップ手順書(資格確認端末編)」
  5. 通信回線の確認、IPv6による接続設定、回線の認証...「オンライン資格確認等システム接続ガイド」
  6. 電子証明書のダウンロード...「オンライン請求ネットワーク関連システム共通認証局ユーザーマニュアル」
  7. オンライン資格確認端末PCのセットアップと動作確認...「医療機関等向けセットアップ手順書(資格確認端末編)」
  8. アカウントの作成...「操作マニュアル(管理者編)」
  9. 顔認証端末に必要なソフトのインストールと設定、動作確認...「各社提供のインストールマニュアル等」
  10. 連携アプリケーションのインストール...「連携アプリケーション導入手順書」
  11. レセコン・電子カルテ側の設定と連携テスト
  12. 院内LANの修正と設定の変更(セキュリティに伴うLANの分離等)

と、こんな感じの流れになろうかと思います。マニュアルも最初は書き換えが激しくどれが正しいのかわからない状況でしたが、今はそれもほぼ収まって、一応マニュアル通りに進めれば問題なくインストールできるようになってます。本連載では個々のインストールはマニュアルに従いますが、その順番や注意する点等を中心に解説していきたいと思います。

 

クエスト的な目標

インストールの順をみても、またメインのマニュアルの「医療機関等向けセットアップ手順書(資格確認端末編)」を読んでみても、非常に手間のかかるインストール作業となることがわかるかと思います。これをいっぺんに最後までやろうとすると大概失敗します。またそうなると何が原因でうまくいかないかの判断もできなくなってしまいます。そこで、段階的に作業を分けてやっていくことにします。

  1. 目標1  オンライン資格確認端末単体でwebアプリを動作させて資格確認を行えるようにする。
  2. 目標2  顔認証端末を導入し、マイナンバーカードでの資格確認ができるようにする。
  3. 目標3  連携アプリケーションを導入し、レセコン・電子カルテとの連携をできるようにする。
  4. 目標4  院内LANを再構築し、ネットワークを分離する。

RPGではないですが、4つのクエストを制覇して完成を目指しましょう!

 


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